Ⅱ 古典幾何の空間
1. 群作用を持つ集合
・ 群Gの空でない集合Xへの作用 action とは、群準同型写像φ:G→SXのことを言う。ここで、SXはXの一般変換群である。このときGをXの変換群 transformation group という。φ(g)(x)を単にgxと書く。
・ Xの一般変換群SXは恒等写像id:SX→SXによりXに作用する。
・ K-ベクトル空間Vの一般一次変換群GL(V)は包含写像ι:GL(V)→SVにより、Vに作用する。
・ n次元数ベクトル空間Knの正則一次変換をKnの標準基底に対し表現した正則行列と同一視することにより、一般線型群GL(n,K)はKnに作用する。そこで、GL(n,K)の部分群、例えば直交群O(n)もまた、Knへの作用を持つ。
・ 群GのG自身への作用として、fixされたg∈Gによる左移動、g-1による右移動、gによる内部自己同型がある。
・ 群Gの必ずしも正規でない部分群Hに対し、Gの左剰余集合G/Hへの作用がある。
・ 群Gが集合Xに対して作用φ:G→SXしているとする。以下、極力φは明示しないようにする。
・ x∈Xに対し、Xの部分集合{gx | g∈G}を、この作用によるxの軌道 orbit といい、Orb(G,x)で表す。
・ x∈Xに対し、Gの部分集合{g∈G | gx=x}はGの部分群であり、この作用によるxの固定化群 stabilizer または等方群 isotropy group といい、Stab(G,x)と書く。
・ Orb(G,x)が{x}である、つまりGの全ての元はxを動かさないようなx∈Xを、この作用による不動点 fixed point という。
・ 任意のx∈Xに対しStab(G,x)が単位群となるとき、この作用は自由 free であるという。これは、「Gの異なる2元は、Xの全ての点を異なる2点に移す」(詳しく書けば、「g≠hならばgx≠hxが任意の点xに対して成立」)、という条件と同等である。
・ φが単射であるとき、この作用は効果的 effective または忠実 faithful であるという。これは、「Gの異なる2元は、Xに対し異なる2つの変化をもたらす」(詳しく書けば、「g≠hならばgx≠hxなるx∈Xが存在する」)と言いかえてもよい。
・ 自由な作用は効果的である。
・ 作用が効果的ならば、GはSXのある部分群に同型である。
・ Gにおける関係 ~ を、g~h :⇔ gとhはXに同じように作用する(つまりφ(g)=φ(h)) と定めると、これはG上の同値関係であり、G/~は群構造を持つ。G/~はXに効果的に作用する。
・ 任意のx∈Xに対しOrb(G,x)=Xであるとき、この作用は推移的 transitive であるという。これは、「任意の2点x,y∈Xに対し、gx=yなるg∈Gが存在する」と言いかえてもよい。
・ 自由かつ推移的な作用を単純推移的 simply transitive または正則 regular であるという。つまり、任意のxについてStab(G,x)={e}かつOrb(G,x)=Xである。また、「任意の2点x,y∈Xに対し、gx=yなるg∈Gがただ一つ存在する」ということ。
・ Gの2つの集合X,Yへの作用φ,ψが同値 equivalent であるとは、X,Yの間の全単射θであって、任意のg∈Gに対し、θ・φ(g)=ψ(g)・θが成り立つものが存在することをいう。
・ 群GがXに推移的に作用するとき、XはGの作用の下で等質集合 homogeneous set という。Gの作用の下の2つの等質集合が同型とは、2つの作用が同値であることをいう。
・ Xが群Gの下で等質集合であるとき、Xの1点xにおける固定化群によるGの左剰余集合G/Stab(G,x)もGの等質集合で、XとG/Stab(G,x)は同型。
1.19.2014
幾何概論3
3. 位相群
・ Gは群であり、かつT1位相空間とする。Gの群演算、積および逆が連続写像であるとき、Gを位相群 topological group という。
・ ノルム空間Vに対して、Vの加法群としての構造とノルムから定まる距離空間の構造を考えると、Vは位相群である。特に標準内積の定められた数ベクトル空間Knは位相群であり、n=1の場合であるR,Cは位相群である。
・ Mn(K)をn2次元数空間と思って、距離空間の構造を入れる。一般線型群GL(n,K)はこの位相から誘導される相対位相を入れると、位相群である。特に乗法群R\{0}, C\{0}は位相群である。
・ 離散位相を持つ位相群を離散群 discrete group という。T1性により、位数有限の位相群は離散群である。
・ 位相群の直積集合もまた位相群の構造を持つ。
・ 位相群の部分群は相対位相により位相群となる。特に閉集合であるような部分位相群を閉部分群 closed subgroup という。
・ GL(n,R), U(n), O(n)はGL(n,C)の閉部分群。特に、U(n),O(n)はコンパクト。U(1)は絶対値1の複素数のなす円周群と同一視できる。
・ 群Gとg∈Gに対して、2つの写像Lg:G→G (x→gx)、Rg:G→G (x→xg) を定め、それぞれgによる左移動 left translation 、右移動 right translation という。一般にLg,Rgは全単射であるが群同型ではない。
・ Gが位相群であるときは、Lg, RgはともにGの自己同相写像である。
・ 位相群Gの開集合Oと任意の部分集合Aに対し、積OA, AOはGの開集合。
・ 位相群はT1であるが、更に強くT2である。
・ 位相群Gとその閉部分群Hに対し、商集合G/Hに自然な射影π:G→G/Hにより定まる商位相を入れることで、G/HはT1位相空間となり、πは連続開写像である。Hが正規ならば、G/Hもまた位相群である。この位相群をGのHによる商位相群という。
・ 位相群Gの部分群でGによる相対位相が離散位相であるものを、Gの離散部分群 discrete subgroup という。
・ Znは位相群Rnの離散部分群。GL(n,Z)はGL(n,R)の離散部分群。
・ 位相群Gの離散部分群Γは閉部分群。
・ 2つの位相群の間に全単射群同型同相写像が存在するとき、この2つは位相群として同型であるという。
・ n次元R-ノルム空間Vを位相群と考え、Γ≠{0}をVの離散部分群とする。このとき、Vの一次独立な元の組{e1,…, em}で、Γがこれらの整数係数一次結合r1e1+…+rmemのなす集合となるようなものが存在する。そこで、Γは整数群Zのm個の直和Zmと同型。
・ 上の記号の下で商位相群/Γが考えられる(Vは可換群ゆえ、ΓはVの正規部分群となる。また離散部分群は閉部分群であった。)が、V/Γは位相群として、円周群U(1)のm個と、R(n-m)の直積に同型である。
V/Γ ~ U(1)×…×U(1)×R(n-m)
・ 群Zmと同型な群を階数mの格子群 lattice group という。
・ n次元R-ノルム空間Vの離散部分群を格子部分群ということにする。
・ 位相群Rnの階数nの格子分群Γによる商位相群Rn/Γをn次元トーラス群 torus group という。Rn/Γから群構造を忘れた位相空間をn次元トーラス torus といい、Tnで表す。
・ T1はS1であり、TnはS1のn個の直積と同相である。S1はコンパクトであるから、Tychonoffの定理により、Tnはコンパクトである。
・ Gは群であり、かつT1位相空間とする。Gの群演算、積および逆が連続写像であるとき、Gを位相群 topological group という。
・ ノルム空間Vに対して、Vの加法群としての構造とノルムから定まる距離空間の構造を考えると、Vは位相群である。特に標準内積の定められた数ベクトル空間Knは位相群であり、n=1の場合であるR,Cは位相群である。
・ Mn(K)をn2次元数空間と思って、距離空間の構造を入れる。一般線型群GL(n,K)はこの位相から誘導される相対位相を入れると、位相群である。特に乗法群R\{0}, C\{0}は位相群である。
・ 離散位相を持つ位相群を離散群 discrete group という。T1性により、位数有限の位相群は離散群である。
・ 位相群の直積集合もまた位相群の構造を持つ。
・ 位相群の部分群は相対位相により位相群となる。特に閉集合であるような部分位相群を閉部分群 closed subgroup という。
・ GL(n,R), U(n), O(n)はGL(n,C)の閉部分群。特に、U(n),O(n)はコンパクト。U(1)は絶対値1の複素数のなす円周群と同一視できる。
・ 群Gとg∈Gに対して、2つの写像Lg:G→G (x→gx)、Rg:G→G (x→xg) を定め、それぞれgによる左移動 left translation 、右移動 right translation という。一般にLg,Rgは全単射であるが群同型ではない。
・ Gが位相群であるときは、Lg, RgはともにGの自己同相写像である。
・ 位相群Gの開集合Oと任意の部分集合Aに対し、積OA, AOはGの開集合。
・ 位相群はT1であるが、更に強くT2である。
・ 位相群Gとその閉部分群Hに対し、商集合G/Hに自然な射影π:G→G/Hにより定まる商位相を入れることで、G/HはT1位相空間となり、πは連続開写像である。Hが正規ならば、G/Hもまた位相群である。この位相群をGのHによる商位相群という。
・ 位相群Gの部分群でGによる相対位相が離散位相であるものを、Gの離散部分群 discrete subgroup という。
・ Znは位相群Rnの離散部分群。GL(n,Z)はGL(n,R)の離散部分群。
・ 位相群Gの離散部分群Γは閉部分群。
・ 2つの位相群の間に全単射群同型同相写像が存在するとき、この2つは位相群として同型であるという。
・ n次元R-ノルム空間Vを位相群と考え、Γ≠{0}をVの離散部分群とする。このとき、Vの一次独立な元の組{e1,…, em}で、Γがこれらの整数係数一次結合r1e1+…+rmemのなす集合となるようなものが存在する。そこで、Γは整数群Zのm個の直和Zmと同型。
・ 上の記号の下で商位相群/Γが考えられる(Vは可換群ゆえ、ΓはVの正規部分群となる。また離散部分群は閉部分群であった。)が、V/Γは位相群として、円周群U(1)のm個と、R(n-m)の直積に同型である。
V/Γ ~ U(1)×…×U(1)×R(n-m)
・ 群Zmと同型な群を階数mの格子群 lattice group という。
・ n次元R-ノルム空間Vの離散部分群を格子部分群ということにする。
・ 位相群Rnの階数nの格子分群Γによる商位相群Rn/Γをn次元トーラス群 torus group という。Rn/Γから群構造を忘れた位相空間をn次元トーラス torus といい、Tnで表す。
・ T1はS1であり、TnはS1のn個の直積と同相である。S1はコンパクトであるから、Tychonoffの定理により、Tnはコンパクトである。
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1.18.2014
幾何概論2
2. 位相空間
・ 集合Xに、開集合とよばれるXの部分集合の族が与えられ、次を充たすとき、Xを位相空間 topological space という。
(1) X,Φは開集合
(2) 有限個の開集合の交わりもまた開集合
(3) 任意個の開集合の和集合もまた開集合
・ 開集合の補集合で表される集合を閉集合という。閉集合は次の性質を充たす。
(1) X,Φは閉集合
(2) 有限個の閉集合の和集合もまた閉集合
(3) 任意個の閉集合の交わりもまた閉集合
・ 閉集合は開集合の双対概念であり、閉集合系を定めることにより位相を定義することもできる。
・ Xの全ての部分集合を開集合とするような位相を離散位相 discrete topology, XとΦのみを開集合とするような位相を密着位相 indiscrete topology という。
・ 位相空間の重要な例として距離空間 metric space がある。
・ 集合X上の距離 distance とは、写像d:X×X→Rであって、次を充たすもの。
(1) 正値 d(x,y)≧0であり、d(x,y)=0となるのはx=yのときに限る。
(2) 対称 d(x,y)=d(y,x)
(3) 三角不等式 d(x,y)+d(y,z)≧d(x,z)
・ 距離の与えられた集合を距離空間という。距離空間Xの部分集合Oに対し、Oの各点xについて、ある正数ε>0が存在し、B(x,ε)={y∈X | d(x,y)<ε}⊂OとなるときにOはXの開集合である、と定めることにより、Xは位相空間となる。距離空間に対しては常にこの位相を考える。上のB(x,ε)をx中心、ε半径の開球体、あるいはxのε近傍という。
・ ノルム空間Vにおいて、d(x,y)=||x-y||とおくことにより、Vは距離空間となる。
・ 位相空間Xの部分集合Yに対して、Xの開集合とYの交わりで表されるYの部分集合を、Yの開集合と定めることにより、Yは位相空間となる。このとき、YはXの部分位相空間 topological subspace であるといい、Yの位相をXの部分空間位相 subspace topology あるいは相対位相 relative topology という。
・ 位相空間Xから集合Yへの全射p:X→Yが与えられたとき、pによる逆像がXの開集合となっているようなYの部分集合を、Yの開集合と定めることにより、Yは位相空間となる。このとき、Yをpによる商空間 quotient space といい、Yの位相を商空間位相 quotient space topology という。
・ 特に位相空間Xに同値関係~が与えられたとき、p:X→X/~を自然な射影として、X/~に商位相が定まる。このときX/~を、同値関係~による商空間という。
・ 位相空間の直積集合にも位相空間の構造が入る。これを積空間という。
・ 位相空間Xの点xを含む開集合を、xの開近傍という。
・ 位相空間Xの部分集合AとXの点xに対し、
(1) xの開近傍でAに包まれるものがあるとき、xをAの内点 interior point という。
(2) xの開近傍でAの補集合に包まれるものがあるとき、xをAの外点 exterior point という。
(3) そのどちらでもないとき、xをAの境界点 boundary point という。
・ Aの内点の集合をAの開核 open kernel という。Aの開核はAに包まれる最大の開集合である。
・ Aを包む全ての閉集合の共通部分をAの閉包 closure という。Aの閉包はAを包む最小の閉集合である。
・ 位相空間Xから位相空間Yへの写像f:X→Yが点x∈Xにおいて連続 continuous とは、f(x)のYにおける任意の近傍Vに対して、xのXにおける近傍Uが存在し、f(U)⊂Vとなることをいう。全ての点において連続なとき、fは連続写像であるという。fが連続であることは、Yの任意の開集合のfによる逆像がXの開集合となっていることと同値である。また、Yの任意の閉集合のfによる逆像がXの閉集合となっていることとも同値である。
・ 位相空間Xから位相空間Yへの写像f:X→Yが開写像 open map であるとは、Xの任意の開集合のfによる像がYの開集合となっていること。
・ 位相空間の間に、連続全単射があり、逆写像もまた連続であるとき、2つの位相空間は同相 homeomorphic であるという。これは連続全単射な開写像があることと同じである。このような写像を同相写像 homeomorphism という。
・ 位相空間XからX自身への同相写像をXの自己同相写像 self-homeomorphism という。
● 位相空間への諸条件
・ 位相空間Xの全ての1点集合が閉集合であるとき、XをT1空間という。
・ 位相空間Xの任意の異なる2点を開集合で分離できるとき、XをHausdorff空間、あるいはT2空間という。
・ 位相空間Xの任意の開被覆に対し、その有限部分被覆が存在するとき、Xはコンパクト compact であるという。
・ コンパクト性は連続写像により不変である。Hausdorff空間のコンパクト集合は閉集合である。従って、コンパクト空間からHausdorff空間への全単射連続写像は同相写像である。
・ (Tychonoffの定理) コンパクト空間の積空間はコンパクト。
・ (Heine-Borelの定理) Rnの部分集合Aがコンパクトであることと有界閉集合であることは同値。
・ (最大値・最小値原理) コンパクト空間上の実数値連続関数は最大値、最小値を持つ。
・ 位相空間Xの各点xに対し、xのコンパクトな閉近傍が存在するとき、Xは局所コンパクト locally compact であるという。XがコンパクトならばXは局所コンパクトである。
・ 位相空間Xが非自明な2つの開集合の非交和で表されるとき、Xは非連結であるといい、そうでないとき、Xは連結 connected であるという。
・ 連結性は連続写像により不変である。
・ 連結空間の積空間は連結。
・ 位相空間Xの極大連結部分集合をXの連結成分 connected component という。連結成分は閉集合である。
・ 位相空間Xに対し、ある整数nが定まり、Xの各点xがRnの開集合Vと同相な近傍Uを持つとき、Xをn次元位相多様体 topological manifold という。同相写像をφ:U→Vとするとき、(U,φ)をxの座標近傍 coordinate neighborhood という。
・ 集合Xに、開集合とよばれるXの部分集合の族が与えられ、次を充たすとき、Xを位相空間 topological space という。
(1) X,Φは開集合
(2) 有限個の開集合の交わりもまた開集合
(3) 任意個の開集合の和集合もまた開集合
・ 開集合の補集合で表される集合を閉集合という。閉集合は次の性質を充たす。
(1) X,Φは閉集合
(2) 有限個の閉集合の和集合もまた閉集合
(3) 任意個の閉集合の交わりもまた閉集合
・ 閉集合は開集合の双対概念であり、閉集合系を定めることにより位相を定義することもできる。
・ Xの全ての部分集合を開集合とするような位相を離散位相 discrete topology, XとΦのみを開集合とするような位相を密着位相 indiscrete topology という。
・ 位相空間の重要な例として距離空間 metric space がある。
・ 集合X上の距離 distance とは、写像d:X×X→Rであって、次を充たすもの。
(1) 正値 d(x,y)≧0であり、d(x,y)=0となるのはx=yのときに限る。
(2) 対称 d(x,y)=d(y,x)
(3) 三角不等式 d(x,y)+d(y,z)≧d(x,z)
・ 距離の与えられた集合を距離空間という。距離空間Xの部分集合Oに対し、Oの各点xについて、ある正数ε>0が存在し、B(x,ε)={y∈X | d(x,y)<ε}⊂OとなるときにOはXの開集合である、と定めることにより、Xは位相空間となる。距離空間に対しては常にこの位相を考える。上のB(x,ε)をx中心、ε半径の開球体、あるいはxのε近傍という。
・ ノルム空間Vにおいて、d(x,y)=||x-y||とおくことにより、Vは距離空間となる。
・ 位相空間Xの部分集合Yに対して、Xの開集合とYの交わりで表されるYの部分集合を、Yの開集合と定めることにより、Yは位相空間となる。このとき、YはXの部分位相空間 topological subspace であるといい、Yの位相をXの部分空間位相 subspace topology あるいは相対位相 relative topology という。
・ 位相空間Xから集合Yへの全射p:X→Yが与えられたとき、pによる逆像がXの開集合となっているようなYの部分集合を、Yの開集合と定めることにより、Yは位相空間となる。このとき、Yをpによる商空間 quotient space といい、Yの位相を商空間位相 quotient space topology という。
・ 特に位相空間Xに同値関係~が与えられたとき、p:X→X/~を自然な射影として、X/~に商位相が定まる。このときX/~を、同値関係~による商空間という。
・ 位相空間の直積集合にも位相空間の構造が入る。これを積空間という。
・ 位相空間Xの点xを含む開集合を、xの開近傍という。
・ 位相空間Xの部分集合AとXの点xに対し、
(1) xの開近傍でAに包まれるものがあるとき、xをAの内点 interior point という。
(2) xの開近傍でAの補集合に包まれるものがあるとき、xをAの外点 exterior point という。
(3) そのどちらでもないとき、xをAの境界点 boundary point という。
・ Aの内点の集合をAの開核 open kernel という。Aの開核はAに包まれる最大の開集合である。
・ Aを包む全ての閉集合の共通部分をAの閉包 closure という。Aの閉包はAを包む最小の閉集合である。
・ 位相空間Xから位相空間Yへの写像f:X→Yが点x∈Xにおいて連続 continuous とは、f(x)のYにおける任意の近傍Vに対して、xのXにおける近傍Uが存在し、f(U)⊂Vとなることをいう。全ての点において連続なとき、fは連続写像であるという。fが連続であることは、Yの任意の開集合のfによる逆像がXの開集合となっていることと同値である。また、Yの任意の閉集合のfによる逆像がXの閉集合となっていることとも同値である。
・ 位相空間Xから位相空間Yへの写像f:X→Yが開写像 open map であるとは、Xの任意の開集合のfによる像がYの開集合となっていること。
・ 位相空間の間に、連続全単射があり、逆写像もまた連続であるとき、2つの位相空間は同相 homeomorphic であるという。これは連続全単射な開写像があることと同じである。このような写像を同相写像 homeomorphism という。
・ 位相空間XからX自身への同相写像をXの自己同相写像 self-homeomorphism という。
● 位相空間への諸条件
・ 位相空間Xの全ての1点集合が閉集合であるとき、XをT1空間という。
・ 位相空間Xの任意の異なる2点を開集合で分離できるとき、XをHausdorff空間、あるいはT2空間という。
・ 位相空間Xの任意の開被覆に対し、その有限部分被覆が存在するとき、Xはコンパクト compact であるという。
・ コンパクト性は連続写像により不変である。Hausdorff空間のコンパクト集合は閉集合である。従って、コンパクト空間からHausdorff空間への全単射連続写像は同相写像である。
・ (Tychonoffの定理) コンパクト空間の積空間はコンパクト。
・ (Heine-Borelの定理) Rnの部分集合Aがコンパクトであることと有界閉集合であることは同値。
・ (最大値・最小値原理) コンパクト空間上の実数値連続関数は最大値、最小値を持つ。
・ 位相空間Xの各点xに対し、xのコンパクトな閉近傍が存在するとき、Xは局所コンパクト locally compact であるという。XがコンパクトならばXは局所コンパクトである。
・ 位相空間Xが非自明な2つの開集合の非交和で表されるとき、Xは非連結であるといい、そうでないとき、Xは連結 connected であるという。
・ 連結性は連続写像により不変である。
・ 連結空間の積空間は連結。
・ 位相空間Xの極大連結部分集合をXの連結成分 connected component という。連結成分は閉集合である。
・ 位相空間Xに対し、ある整数nが定まり、Xの各点xがRnの開集合Vと同相な近傍Uを持つとき、Xをn次元位相多様体 topological manifold という。同相写像をφ:U→Vとするとき、(U,φ)をxの座標近傍 coordinate neighborhood という。
幾何概論1
村上信吾「幾何概論」を読む。まずは基本事項の復習。
Ⅰ 群と位相
1. 群とベクトル空間
・ 実数、複素数を無定義に導入する。実数の集合をR、複素数の集合をCと書く。どちらか特に指定しない場合はKと書く。
・ 直積集合Rn、Cnをn次元数空間という。これらには様々な構造が入る。ベクトル空間、距離による位相空間、アフィン空間、ユークリッド空間、リーマン空間など。今後の議論に際してどの構造を設定しているか注意する。
・ 数空間はベクトル空間の構造を持つ(数ベクトル空間 numerical vector space )。
・ n次正方行列の集合をMn(K)と書く。Mn(K)はK-algebra (ベクトル空間であり、環であるもの)である。
・ 可逆行列 invertible matrix のことを正則行列 non-singular matrix ともいう。正則行列全体の集合には群構造が入る。これをK係数n次一般線形群 general linear group という。
・ Mn(K)の元はベクトル空間Knの一次変換と同一視できる。
● 群の概念
・ 群とは結合法則を充たし、単位元を持ち、全ての元に対して逆元を持つ代数系である。
・ 群の例として、一般線形群、環の乗法群、一般変換群 general transformation group、n次対称群 symmetric group などがある。
・ 部分群 subgroup とは部分集合に群構造が入り、それが全体集合の群構造と一致しているようなもの。
・ 群Gの部分群H,H'について、H∩H'もまたGの部分群である。
・ 群の部分集合Sが与えられたとき、Sを含む最小の部分群が存在し、Sの生成する部分群という。ただ1つの元で生成される群を巡回群 cyclic group という。
・ GL(n,K)の部分群としてユニタリ群U(n)、直交群O(n)がある。GL(n,K)の元を一次変換として見たとき、これらは標準内積を保つものからなる。
・ Nが群Gの正規部分群 normal subgroup であるとは、任意のg∈Gに対し、gNg-1=Nとなることをいう。もっとも簡単な例として、Gが可換群である場合はすべての部分群は正規部分群となる。
・ Nが群Gの正規部分群のとき、左剰余類G/Nと右剰余類N\Gは一致し、群構造が入る。これをGのNによる商群 quotient group または剰余群 residue class group という。
・ 2つの群の直積集合も群構造を持つ。
・ 群準同型写像 group homomorphism とは、群から群への写像で積を保つもの。
・ 群GとG'の間に全単射準同型写像があり、逆写像も準同型であるとき(この条件は実際は除ける)、GとG'は同型 isomorphic であるという。
・ (準同型定理) 群準同型ρ:G→G'に対し、im ρはG'の部分群、ker ρはGの正規部分群であり、同型G/ker ρ~im ρが成立。
・ 群GからG自身への準同型写像をGの自己準同型 endmorphism という。同型写像をGの自己同型 automorphism という。g∈Gに対し、写像AgをAg:G→G (x→gxg-1)で定めると、AgはGの自己同型となる。これを元gによるGの内部自己同型 inner automorphism という。内部自己同型で写り合う元や部分群を共役 conjugate という。
・ 積が可換であるような群を可換群またはアーベル群 abelian group という。この場合、積を+で書き、単位元を零元0と呼び、gの逆元をマイナス元-gで書く記法を採用することも多い。そのように書いたときは、加法群 additive group という。
・ 整数の集合をZ、有理数の集合をQと書く。Z,Q,R,Cとも加法によって加法群である。
・ Zは1により生成される巡回群。mZはZの部分群であるが、Zは可換であるから特に正規部分群である。そこで商群Z/mZが定まるが、これは位数mの巡回群である。
● ベクトル空間
・ スカラー倍の定められた加法群をベクトル空間 vector space という。
・ {0}でないベクトル空間Vの任意の元が、有限個の一次独立な元e1, …, enの一次結合で書けるとき、Vは有限次元であるという。このような条件を充たす元の組(一般には順序も込めて)を基底という。基底の濃度は基底のとり方によらず一定であり、これをVの次元といい、dim Vと書く。dim {0}=0とする。以下では有限次元ベクトル空間のみを扱う。
・ 部分ベクトル空間とは、ベクトル空間の部分群であって、スカラー倍についても閉じているようなもの。
・ ベクトル空間Vの部分空間W,W'に対し、W∩W'もまたVの部分空間。
・ ベクトル空間の部分集合Sが与えられたとき、Sを含む最小の部分空間が存在し、これをSの生成する部分空間という。 ベクトル空間Vの部分空間W,W'に対し、 W∪W'の生成する部分空間をW+W'で表す。
・ (次元公式) ベクトル空間Vの部分空間W,W'に対し、dim W + dim W' = dim (W+W') - dim W∩W'
・ Wをベクトル空間Vの部分空間とするとき、商群V/Wにはベクトル空間の構造も入る。これをVのWによる商ベクトル空間 quotient vector space という。
・ 線型写像 linear map とは、ベクトル空間からベクトル空間への写像で和とスカラー倍を保つもの。
・ ベクトル空間VとV'の間に全単射線型写像があり、逆写像も線型であるとき(この条件は実際は除ける)、VとV'は同型 isomorphic であるという。ベクトル空間における同型は、次元が等しいことと同値である。
・ (次元公式2) 線型写像ρ:V→V'に対し、im ρはV'の部分空間、ker ρはVの部分空間であり、同型V/ker ρ~im ρが成立。特に、dimV = dim ker ρ + dim im ρ
・ ベクトル空間VからV自身への線型写像をVの一次変換という。これが同型写像であるときは特に正則一次変換という。群のときと同様に自己同型といういうことも多い。Vの正則一次変換全体のなす群をVの一般一次変換群 general linear transformation group といい、GL(V)で表す。GL(Kn)はGL(n,K)と自然に同型である。
・ K-ベクトル空間VからKへの線型写像を、一次形式 linear form という。V上の一次形式全体のなすベクトル空間をVの双対ベクトル空間 dual vector space といい、V*と書く。Vの基底{e1,…, en}に対応して定まるV*の基底{f1, …, fn} (fi(ej)=δij) を{e1, …, en}の双対基底という。
・ K-ベクトル空間Vに対し、成分ごとに線型な写像V×V→Kを、双一次形式 bilinear form という。V上の双一次形式gが非退化 non-degenerate とは、「g(x,y)=0が任意のyに対して成り立つのはx=0のときに限る」という条件を充たすこと、gが対称 symmetric とは、g(x,y)=g(y,x)を充たすことをいう。
・ K-ベクトル空間V上の対称双一次形式gに対し、q(x)=g(x,x)で定まる関数q:V→KをV上の二次形式 quadratic form という。逆に二次形式qが与えられたとき、g(x,y)={q(x+y)-q(x)-q(y)}/2によって、対称双一次形式が定まる。
・ K-ベクトル空間Vに対し、写像g:V×V→Kが、3つの条件、(1)正値、即ちg(x,x)≧0かつ、等号成立はx=0に限る、(2)Hermite対称、即ちg(x,y)とg(y,x)は複素共役、(3)第一成分について線型、を充たすとき、gをV上の(複素)内積 inner product という。特にK=Rのときは、gは非退化な対称双一次形式である。K=Cのときにはそうはならないが、非退化なHermite対称半双一次形式 non-degenerate Hermitian symmetric sesquilinear form と呼べるようなものになっている。
・ 一般の体K上のベクトル空間Vにおける内積とは非退化な対称双一次形式とする。この意味の内積と上の意味の内積は異なることに注意せよ。以下では、K=R,Cのみを考え、内積という語は上に定義した意味で用いる。
・ ベクトル空間Vにおいて複素内積gを固定して考えるとき、g(x,y)を<x,y>と書く。以下、内積の与えられたベクトル空間を単に内積空間といい、内積はこのように書くことにする。
・ (Rieszの表現定理) 内積空間V上の一次形式fに対し、f(x)=<a,x>を充たす、a∈Vが存在する。
・ 内積空間Vの基底{e1, …, en}が<ei,ej>=δijを充たすとき、これをVの正規直交基底 orthonormal basis という。Gramm-Schmidtの直交化法により、1次元以上の内積空間には正規直交基底が必ず存在する。
・ ベクトル空間Vに対し、写像N:V→Rが、3つの条件、(1)正値、即ちN(x)≧0, (2)斉次、即ちN(ax)=|a|N(x), (3)三角不等式、即ちN(x+y)≦N(x)+N(y)を充たすとき、NをV上のノルム norm であるという。
・ ベクトル空間VにおいてノルムNを固定して考えるとき、N(x)を||x||と書く。
・ 内積空間Vにおいて、N(x)=√<x,x>と定める事により、ノルムが得られる。つまり、内積空間はノルム空間である。内積空間では常にこのようなノルムを考える事にする。
・ 内積空間Vの内積を保つ一次変換をVの直交変換(K=R)、ユニタリ変換(K=C)という。これらはGL(V)の部分群をなす。表現行列は直交行列、ユニタリ行列になる。
・ 内積空間Vの一次変換αが<α(x),y>=(x,α(y)>を充たすとき、αをVの対称変換(K=R)、Hermite変換(K=C)という。表現行列は対称行列、Hermite行列になる。
Ⅰ 群と位相
1. 群とベクトル空間
・ 実数、複素数を無定義に導入する。実数の集合をR、複素数の集合をCと書く。どちらか特に指定しない場合はKと書く。
・ 直積集合Rn、Cnをn次元数空間という。これらには様々な構造が入る。ベクトル空間、距離による位相空間、アフィン空間、ユークリッド空間、リーマン空間など。今後の議論に際してどの構造を設定しているか注意する。
・ 数空間はベクトル空間の構造を持つ(数ベクトル空間 numerical vector space )。
・ n次正方行列の集合をMn(K)と書く。Mn(K)はK-algebra (ベクトル空間であり、環であるもの)である。
・ 可逆行列 invertible matrix のことを正則行列 non-singular matrix ともいう。正則行列全体の集合には群構造が入る。これをK係数n次一般線形群 general linear group という。
・ Mn(K)の元はベクトル空間Knの一次変換と同一視できる。
● 群の概念
・ 群とは結合法則を充たし、単位元を持ち、全ての元に対して逆元を持つ代数系である。
・ 群の例として、一般線形群、環の乗法群、一般変換群 general transformation group、n次対称群 symmetric group などがある。
・ 部分群 subgroup とは部分集合に群構造が入り、それが全体集合の群構造と一致しているようなもの。
・ 群Gの部分群H,H'について、H∩H'もまたGの部分群である。
・ 群の部分集合Sが与えられたとき、Sを含む最小の部分群が存在し、Sの生成する部分群という。ただ1つの元で生成される群を巡回群 cyclic group という。
・ GL(n,K)の部分群としてユニタリ群U(n)、直交群O(n)がある。GL(n,K)の元を一次変換として見たとき、これらは標準内積を保つものからなる。
・ Nが群Gの正規部分群 normal subgroup であるとは、任意のg∈Gに対し、gNg-1=Nとなることをいう。もっとも簡単な例として、Gが可換群である場合はすべての部分群は正規部分群となる。
・ Nが群Gの正規部分群のとき、左剰余類G/Nと右剰余類N\Gは一致し、群構造が入る。これをGのNによる商群 quotient group または剰余群 residue class group という。
・ 2つの群の直積集合も群構造を持つ。
・ 群準同型写像 group homomorphism とは、群から群への写像で積を保つもの。
・ 群GとG'の間に全単射準同型写像があり、逆写像も準同型であるとき(この条件は実際は除ける)、GとG'は同型 isomorphic であるという。
・ (準同型定理) 群準同型ρ:G→G'に対し、im ρはG'の部分群、ker ρはGの正規部分群であり、同型G/ker ρ~im ρが成立。
・ 群GからG自身への準同型写像をGの自己準同型 endmorphism という。同型写像をGの自己同型 automorphism という。g∈Gに対し、写像AgをAg:G→G (x→gxg-1)で定めると、AgはGの自己同型となる。これを元gによるGの内部自己同型 inner automorphism という。内部自己同型で写り合う元や部分群を共役 conjugate という。
・ 積が可換であるような群を可換群またはアーベル群 abelian group という。この場合、積を+で書き、単位元を零元0と呼び、gの逆元をマイナス元-gで書く記法を採用することも多い。そのように書いたときは、加法群 additive group という。
・ 整数の集合をZ、有理数の集合をQと書く。Z,Q,R,Cとも加法によって加法群である。
・ Zは1により生成される巡回群。mZはZの部分群であるが、Zは可換であるから特に正規部分群である。そこで商群Z/mZが定まるが、これは位数mの巡回群である。
● ベクトル空間
・ スカラー倍の定められた加法群をベクトル空間 vector space という。
・ {0}でないベクトル空間Vの任意の元が、有限個の一次独立な元e1, …, enの一次結合で書けるとき、Vは有限次元であるという。このような条件を充たす元の組(一般には順序も込めて)を基底という。基底の濃度は基底のとり方によらず一定であり、これをVの次元といい、dim Vと書く。dim {0}=0とする。以下では有限次元ベクトル空間のみを扱う。
・ 部分ベクトル空間とは、ベクトル空間の部分群であって、スカラー倍についても閉じているようなもの。
・ ベクトル空間Vの部分空間W,W'に対し、W∩W'もまたVの部分空間。
・ ベクトル空間の部分集合Sが与えられたとき、Sを含む最小の部分空間が存在し、これをSの生成する部分空間という。 ベクトル空間Vの部分空間W,W'に対し、 W∪W'の生成する部分空間をW+W'で表す。
・ (次元公式) ベクトル空間Vの部分空間W,W'に対し、dim W + dim W' = dim (W+W') - dim W∩W'
・ Wをベクトル空間Vの部分空間とするとき、商群V/Wにはベクトル空間の構造も入る。これをVのWによる商ベクトル空間 quotient vector space という。
・ 線型写像 linear map とは、ベクトル空間からベクトル空間への写像で和とスカラー倍を保つもの。
・ ベクトル空間VとV'の間に全単射線型写像があり、逆写像も線型であるとき(この条件は実際は除ける)、VとV'は同型 isomorphic であるという。ベクトル空間における同型は、次元が等しいことと同値である。
・ (次元公式2) 線型写像ρ:V→V'に対し、im ρはV'の部分空間、ker ρはVの部分空間であり、同型V/ker ρ~im ρが成立。特に、dimV = dim ker ρ + dim im ρ
・ ベクトル空間VからV自身への線型写像をVの一次変換という。これが同型写像であるときは特に正則一次変換という。群のときと同様に自己同型といういうことも多い。Vの正則一次変換全体のなす群をVの一般一次変換群 general linear transformation group といい、GL(V)で表す。GL(Kn)はGL(n,K)と自然に同型である。
・ K-ベクトル空間VからKへの線型写像を、一次形式 linear form という。V上の一次形式全体のなすベクトル空間をVの双対ベクトル空間 dual vector space といい、V*と書く。Vの基底{e1,…, en}に対応して定まるV*の基底{f1, …, fn} (fi(ej)=δij) を{e1, …, en}の双対基底という。
・ K-ベクトル空間Vに対し、成分ごとに線型な写像V×V→Kを、双一次形式 bilinear form という。V上の双一次形式gが非退化 non-degenerate とは、「g(x,y)=0が任意のyに対して成り立つのはx=0のときに限る」という条件を充たすこと、gが対称 symmetric とは、g(x,y)=g(y,x)を充たすことをいう。
・ K-ベクトル空間V上の対称双一次形式gに対し、q(x)=g(x,x)で定まる関数q:V→KをV上の二次形式 quadratic form という。逆に二次形式qが与えられたとき、g(x,y)={q(x+y)-q(x)-q(y)}/2によって、対称双一次形式が定まる。
・ K-ベクトル空間Vに対し、写像g:V×V→Kが、3つの条件、(1)正値、即ちg(x,x)≧0かつ、等号成立はx=0に限る、(2)Hermite対称、即ちg(x,y)とg(y,x)は複素共役、(3)第一成分について線型、を充たすとき、gをV上の(複素)内積 inner product という。特にK=Rのときは、gは非退化な対称双一次形式である。K=Cのときにはそうはならないが、非退化なHermite対称半双一次形式 non-degenerate Hermitian symmetric sesquilinear form と呼べるようなものになっている。
・ 一般の体K上のベクトル空間Vにおける内積とは非退化な対称双一次形式とする。この意味の内積と上の意味の内積は異なることに注意せよ。以下では、K=R,Cのみを考え、内積という語は上に定義した意味で用いる。
・ ベクトル空間Vにおいて複素内積gを固定して考えるとき、g(x,y)を<x,y>と書く。以下、内積の与えられたベクトル空間を単に内積空間といい、内積はこのように書くことにする。
・ (Rieszの表現定理) 内積空間V上の一次形式fに対し、f(x)=<a,x>を充たす、a∈Vが存在する。
・ 内積空間Vの基底{e1, …, en}が<ei,ej>=δijを充たすとき、これをVの正規直交基底 orthonormal basis という。Gramm-Schmidtの直交化法により、1次元以上の内積空間には正規直交基底が必ず存在する。
・ ベクトル空間Vに対し、写像N:V→Rが、3つの条件、(1)正値、即ちN(x)≧0, (2)斉次、即ちN(ax)=|a|N(x), (3)三角不等式、即ちN(x+y)≦N(x)+N(y)を充たすとき、NをV上のノルム norm であるという。
・ ベクトル空間VにおいてノルムNを固定して考えるとき、N(x)を||x||と書く。
・ 内積空間Vにおいて、N(x)=√<x,x>と定める事により、ノルムが得られる。つまり、内積空間はノルム空間である。内積空間では常にこのようなノルムを考える事にする。
・ 内積空間Vの内積を保つ一次変換をVの直交変換(K=R)、ユニタリ変換(K=C)という。これらはGL(V)の部分群をなす。表現行列は直交行列、ユニタリ行列になる。
・ 内積空間Vの一次変換αが<α(x),y>=(x,α(y)>を充たすとき、αをVの対称変換(K=R)、Hermite変換(K=C)という。表現行列は対称行列、Hermite行列になる。
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Ueber die Hypothesen, welche der Geometrie zu Grunde liegen.
This is the beginning part translated by Clifford.
It is known that geometry assumes, as things given, both the notion of space and the first principles of constructions in space. She gives definitions of them which are merely nominal, while the true determinations appear in the form of axioms. The relation of these assumptions remains consequently in darkness; we neither perceive whether and how far their connection is necessary, nor a priori, whether it is possible.
From Euclid to Legendre (to name the most famous of modern reforming geometers) this darkness was cleared up neither by mathematicians nor by such philosophers as concerned themselves with it. The reason of this is doubtless that the general notion of multiply extended magnitudes (in which space-magnitudes are included) remained entirely unworked. I have in the first place, therefore, set myself the task of constructing the notion of a multiply extended magnitude out of general notions of magnitude. It will follow from this that a multiply extended magnitude is capable of different measure-relations, and consequently that space is only a particular case of a triply extended magnitude. But hence flows as a necessary consequence that the propositions of geometry cannot be derived from general notions of magnitude, but that the properties which distinguish space from other conceivable triply extended magnitudes are only to be deduced from experience. Thus arises the problem, to discover the simplest matters of fact from which the measure-relations of space may be determined; a problem which from the nature of the case is not completely determinate, since there may be several systems of matters of fact which suffice to determine the measure-relations of space - the most important system for our present purpose being that which Euclid has laid down as a foundation. These matters of fact are - like all matters of fact - not necessary, but only of empirical certainty; they are hypotheses. We may therefore investigate their probability, which within the limits of observation is of course very great, and inquire about the justice of their extension beyond the limits of observation, on the side both of the infinitely great and of the infinitely small.
It is known that geometry assumes, as things given, both the notion of space and the first principles of constructions in space. She gives definitions of them which are merely nominal, while the true determinations appear in the form of axioms. The relation of these assumptions remains consequently in darkness; we neither perceive whether and how far their connection is necessary, nor a priori, whether it is possible.
From Euclid to Legendre (to name the most famous of modern reforming geometers) this darkness was cleared up neither by mathematicians nor by such philosophers as concerned themselves with it. The reason of this is doubtless that the general notion of multiply extended magnitudes (in which space-magnitudes are included) remained entirely unworked. I have in the first place, therefore, set myself the task of constructing the notion of a multiply extended magnitude out of general notions of magnitude. It will follow from this that a multiply extended magnitude is capable of different measure-relations, and consequently that space is only a particular case of a triply extended magnitude. But hence flows as a necessary consequence that the propositions of geometry cannot be derived from general notions of magnitude, but that the properties which distinguish space from other conceivable triply extended magnitudes are only to be deduced from experience. Thus arises the problem, to discover the simplest matters of fact from which the measure-relations of space may be determined; a problem which from the nature of the case is not completely determinate, since there may be several systems of matters of fact which suffice to determine the measure-relations of space - the most important system for our present purpose being that which Euclid has laid down as a foundation. These matters of fact are - like all matters of fact - not necessary, but only of empirical certainty; they are hypotheses. We may therefore investigate their probability, which within the limits of observation is of course very great, and inquire about the justice of their extension beyond the limits of observation, on the side both of the infinitely great and of the infinitely small.
幾何学
コトバンクより
・世界大百科事典第二版の解説
きかがく【幾何学 geometry】
一般に,幾何学とは図形に関する数学であると説明されているが,幾何学の対象,内容,方法は時代とともに著しく変遷し,その範囲も非常に拡大され,現在ではこれらをすべて含むように幾何学を定義することはできない。しかしながら,幾何学と名のつく数学では,図形の直観,またはその類似に依存して研究される度合が強い。なお,geometryはギリシア語の〈土地を測る〉を意味するgeōmetriaに由来し,幾何は中国語で量的な問いを意味する疑問詞で,中国からの伝来語である。
・百科事典マイぺディアの解説
幾何学 【きかがく】
図形や空間の性質を研究する数学の部門。エジプト,バビロニア,ギリシアを通じて発展した初等幾何学はユークリッド幾何学に体系化されたが,近代以後非ユークリッド幾何学,解析幾何学,射影幾何学,微分幾何学,リーマン幾何学,位相幾何学など多くの分野が生まれている。
・世界大百科事典第二版の解説
きかがく【幾何学 geometry】
一般に,幾何学とは図形に関する数学であると説明されているが,幾何学の対象,内容,方法は時代とともに著しく変遷し,その範囲も非常に拡大され,現在ではこれらをすべて含むように幾何学を定義することはできない。しかしながら,幾何学と名のつく数学では,図形の直観,またはその類似に依存して研究される度合が強い。なお,geometryはギリシア語の〈土地を測る〉を意味するgeōmetriaに由来し,幾何は中国語で量的な問いを意味する疑問詞で,中国からの伝来語である。
・百科事典マイぺディアの解説
幾何学 【きかがく】
図形や空間の性質を研究する数学の部門。エジプト,バビロニア,ギリシアを通じて発展した初等幾何学はユークリッド幾何学に体系化されたが,近代以後非ユークリッド幾何学,解析幾何学,射影幾何学,微分幾何学,リーマン幾何学,位相幾何学など多くの分野が生まれている。
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Geometry
From Wikipedia
Geometry (Ancient Greek: γεωμετρία; geo- "earth", -metron "measurement") is a branch of mathematics concerned with questions of shape, size, relative position of figures, and the properties of space. A mathematician who works in the field of geometry is called a geometer. Geometry arose independently in a number of early cultures as a body of practical knowledge concerning lengths, areas, and volumes, with elements of a formal mathematical science emerging in the West as early as Thales (6th Century BC). By the 3rd century BC geometry was put into an axiomatic form by Euclid, whose treatment—Euclidean geometry—set a standard for many centuries to follow.[1] Archimedes developed ingenious techniques for calculating areas and volumes, in many ways anticipating modern integral calculus. The field of astronomy, especially mapping the positions of the stars and planets on the celestial sphere and describing the relationship between movements of celestial bodies, served as an important source of geometric problems during the next one and a half millennia. Both geometry and astronomy were considered in the classical world to be part of the Quadrivium, a subset of the seven liberal arts considered essential for a free citizen to master.
Geometry (Ancient Greek: γεωμετρία; geo- "earth", -metron "measurement") is a branch of mathematics concerned with questions of shape, size, relative position of figures, and the properties of space. A mathematician who works in the field of geometry is called a geometer. Geometry arose independently in a number of early cultures as a body of practical knowledge concerning lengths, areas, and volumes, with elements of a formal mathematical science emerging in the West as early as Thales (6th Century BC). By the 3rd century BC geometry was put into an axiomatic form by Euclid, whose treatment—Euclidean geometry—set a standard for many centuries to follow.[1] Archimedes developed ingenious techniques for calculating areas and volumes, in many ways anticipating modern integral calculus. The field of astronomy, especially mapping the positions of the stars and planets on the celestial sphere and describing the relationship between movements of celestial bodies, served as an important source of geometric problems during the next one and a half millennia. Both geometry and astronomy were considered in the classical world to be part of the Quadrivium, a subset of the seven liberal arts considered essential for a free citizen to master.
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