1.18.2014

幾何概論2

2. 位相空間



・ 集合Xに、開集合とよばれるXの部分集合の族が与えられ、次を充たすとき、Xを位相空間 topological space という。

  (1) X,Φは開集合
  (2) 有限個の開集合の交わりまた開集合
  (3) 任意個の開集合の和集合また開集合

・ 開集合の補集合で表される集合を閉集合という。閉集合は次の性質を充たす。

  (1) X,Φは閉集合
  (2) 有限個の閉集合の和集合もまた閉集合
  (3) 任意個の閉集合の交わりもまた閉集合

・ 閉集合は開集合の双対概念であり、閉集合系を定めることにより位相を定義することもできる。

・ Xの全ての部分集合を開集合とするような位相を離散位相 discrete topology, XとΦのみを開集合とするような位相を密着位相 indiscrete topology という。

・ 位相空間の重要な例として距離空間 metric space がある。

・ 集合X上の距離 distance とは写像d:X×X→Rであって、次を充たすもの

  (1) 正値 d(x,y)≧0であり、d(x,y)=0となるのはx=yのときに限る

  (2) 対称 d(x,y)=d(y,x)

  (3) 三角不等式 d(x,y)+d(y,z)≧d(x,z)


・ 距離の与えられた集合距離空間という距離空間X部分集合Oに対し、O各点xについてある正数ε>0存在し、B(x,ε)={y∈X | d(x,y)<ε}⊂OとなるときにOはX開集合であると定めることにより、X位相空間となる距離空間に対しては常にこの位相を考える上のB(x,ε)をx中心ε半径のあるいはxε近傍という


・ ノルム空間Vにおいて、d(x,y)=||x-y||おくことにより、V距離空間となる


 位相空間Xの部分集合Yに対して、Xの開集合とYの交わりで表されるYの部分集合を、Yの開集合と定めることにより、Yは位相空間となる。このとき、YはXの部分位相空間 topological subspace であるといい、Yの位相をXの部分空間位相 subspace topology あるいは相対位相 relative topology という。


・ 位相空間Xから集合Yへの全射p:X→Yが与えられたとき、pによる逆像がXの開集合となっているようなYの部分集合を、Yの開集合と定めることにより、Yは位相空間となる。このとき、Yをpによる商空間 quotient space といい、Yの位相を商空間位相 quotient space topology という。

・ 特に位相空間Xに同値関係~が与えられたとき、p:X→X/~を自然な射影として、X/~に商位相が定まる。このときX/~を、同値関係~による商空間という。


・ 位相空間の直積集合にも位相空間の構造が入る。これを積空間という。

・ 位相空間Xの点xを含む開集合を、xの開近傍という。


・ 位相空間Xの部分集合AとXの点xに対し、
  (1) xの開近傍でAに包まれるものがあるとき、xをAの内点 interior point という。
  (2) xの開近傍でAの補集合に包まれるものがあるとき、xをAの外点 exterior point という。
  (3) そのどちらでもないとき、xをAの境界点 boundary point という。

・ Aの内点の集合をAの開核 open kernel という。Aの開核はAに包まれる最大の開集合である。

・ Aを包む全ての閉集合の共通部分をAの閉包 closure という。Aの閉包はAを包む最小の閉集合である。

・ 位相空間Xから位相空間Yへの写像f:X→Yが点x∈Xにおいて連続 continuous とは、f(x)のYにおける任意の近傍Vに対して、xのXにおける近傍Uが存在し、f(U)⊂Vとなることをいう。全ての点において連続なとき、fは連続写像であるという。fが連続であることは、Yの任意の開集合のfによる逆像がXの開集合となっていることと同値である。また、Yの任意の閉集合のfによる逆像がXの閉集合となっていることとも同値である。

・ 位相空間Xから位相空間Yへの写像f:X→Yが開写像 open map であるとは、Xの任意の開集合のfによる像がYの開集合となっていること。

・ 位相空間の間に、連続全単射があり、逆写像もまた連続であるとき、2つの位相空間は同相 homeomorphic であるという。これは連続全単射な開写像があることと同じである。このような写像を同相写像 homeomorphism という。

・ 位相空間XからX自身への同相写像をXの自己同相写像 self-homeomorphism という。

● 位相空間への諸条件


・ 位相空間Xの全ての1点集合が閉集合であるとき、XをT1空間という。

・ 位相空間Xの任意の異なる2点を開集合で分離できるとき、XをHausdorff空間、あるいはT2空間という。

・ 位相空間Xの任意の開被覆に対し、その有限部分被覆が存在するとき、Xはコンパクト compact であるという。

・ コンパクト性は連続写像により不変である。Hausdorff空間のコンパクト集合は閉集合である。従って、コンパクト空間からHausdorff空間への全単射連続写像は同相写像である。

・ (Tychonoffの定理) コンパクト空間の積空間はコンパクト。

・ (Heine-Borelの定理) Rnの部分集合Aがコンパクトであることと有界閉集合であることは同値。

・ (最大値・最小値原理) コンパクト空間上の実数値連続関数は最大値、最小値を持つ。

・ 位相空間X各点xに対しxコンパクトな閉近傍存在するとき、X局所コンパクト locally compact であるという。XコンパクトならばX局所コンパクトである

・ 位相空間X非自明な2つの開集合表されるとき、X非連結であるといいそうでないとき、X連結 connected であるという。


・ 連結性は連続写像により不変である


・ 連結空間の積空間は連結


・ 位相空間X極大連結部分集合をX連結成分 connected component という連結成分は閉集合である


・ 位相空間Xに対しある整数n定まり、X各点xがRn開集合Vと同相な近傍Uを持つとき、Xをn次元位相多様体 topological manifold という。同相写像φ:U→Vとするとき、(U,φ)をx座標近傍 coordinate neighborhood という。

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